日本の電子カルテ市場の現状と将来性
日本の電子カルテ市場は現在成長中ですが、アメリカをはじめとする海外と比べると普及率に明らかな差があります。医療のデジタル化推進と政府の後押しもあり、特にリーズナブルで機能性の高いクラウド型電子カルテを中心に、今後ますます市場の拡大が見込まれています。
日本の電子カルテ市場規模
日本の電子カルテ市場全体の規模は、オンプレミス型とクラウド型を合わせて2018年時点で約2,650億円となっています。 富士経済の調査によると、2032年には病院向けオンプレミス型電子カルテ市場が2,400億円まで成長する一方、診療所向けオンプレミス型電子カルテ市場は250億円まで縮小すると予測されています。 クラウド型電子カルテ市場は2032年に200億円と、2018年比で4.8倍の成長が見込まれています。 オンプレミス型とクラウド型を合わせた電子カルテ市場全体としては、2018年と2019年でほぼ横ばいで、2032年の予測でも大きな変化は見られません。 ただし、クラウド型電子カルテのシェア拡大とオンプレミス型からのシフトが進むことで、市場の内訳は大きく変化していくと考えられます。
クラウド型電子カルテの成長予測
クラウド型電子カルテ市場は、今後大きな成長が見込まれています。株式会社富士経済の調査によると、2032年には200億円と2018年と比較して4.8倍もの市場規模になると予測されています。 中小規模の病院や診療所など予算が限られている医療機関で特に導入が進んでおり、リーズナブルな価格と携帯性の高さ、在宅医療への適性から需要が高まっています。 従来のオンプレミス型電子カルテからのシフトも多く見込まれ、市場は急速に拡大していくと考えられます。
電子カルテの普及率と地域差
日本の電子カルテ普及率は、病院規模によって大きな差があります。400床以上の大病院では76.9%と高い一方、診療所(無床)では39.0%にとどまっています。 地域的にも電子カルテ導入率には偏りがあり、2008年から2014年にかけて積極的に導入している地域とそうでない地域の差が拡大しています。 病院と診療所では電子カルテ導入に関連する地域因子が異なっており、地域差解消のためには、病院と診療所それぞれの特性に合わせた政策介入が必要と考えられます。 今後、自然に地域差が解消されるとは考えにくく、国を挙げての取り組みが求められています。
オンプレとクラウドの導入比率
日本の電子カルテ市場では、オンプレミス型とクラウド型の2種類の電子カルテが存在しています。オンプレミス型は院内にサーバーを設置するタイプで、従来から主流でした。一方、クラウド型は院外のサーバーにデータを保管するタイプで、近年シェアを伸ばしています。2021年の日経メディカルの調査によると、クリニックにおけるクラウド型電子カルテのシェアは約3割まで上昇しています。 トップシェアを獲得したのはクラウド型の「PORTAクリニカルEX」で12.8%、2位はオンプレミス型の「ORCA」で10.8%でした。クラウド型電子カルテは、初期費用が100~200万円程度とオンプレミス型の200~450万円と比べて安価であることや、インターネット環境さえあればいつでもどこでもアクセスできる利便性の高さから、中小規模の病院や診療所を中心に導入が進んでいます。一方、大規模病院ではまだオンプレミス型が主流です。400床以上の大病院の電子カルテ普及率は76.9%と高いものの、その多くはオンプレミス型です。 診療科や業務フローが複雑なため、病院ごとにカスタマイズ開発するオンプレミス型が適しているためです。今後は、クラウド型電子カルテのシェアがさらに拡大し、オンプレミス型からのシフトも進むと予測されています。2018年と比較して2032年にはクラウド型電子カルテ市場が4.8倍の200億円規模になると見込まれています。 一方で大規模病院を中心にオンプレミス型も根強く残るため、当面は両タイプが併存していくことになりそうです。
2024年電子カルテ導入シェアランキング
2024年の電子カルテ導入シェアランキングを見ていきましょう。クリニック向け電子カルテ実態調査の結果から、過去4年間に電子カルテを購入した開業医の回答を中心に、シェア数をランキング化しています。
クラウド型電子カルテのM3デジカル(エムスリーデジカル)が昨年に引き続き1位となり、2位はMedicom-HRシリーズ(ウィーメックス)と、こちらも昨年と同じ結果となりました。 全体的にクラウド型製品がランキング上位に浮上しており、シェア数も増加傾向にあります。M3 Digikarは、コストパフォーマンスと機能性の高さが特徴で、最新のAIによる自動学習機能でカルテ入力時間を削減できます。 CLINICSカルテは、カルテ基本機能と会計機能が充実している点が評価されています。一方、開業医が開発したDynamicsは、50社以上の製品と連携可能で使いやすさが追求されているのが特徴です。オンプレミス型を導入した医師からは自由なカスタマイズ性の良さが、クラウド型を導入した医師からは導入・ランニングコストの安さとアップデートの速さ、シンプルな使い心地の良さが評価されています。 今後もクラウド型電子カルテの普及が進むと考えられます。